線維筋痛症(Fibromyalgia)は、全身に広がる慢性的な痛みや疲労感、さらには不眠症など、多岐にわたる症状を伴う疾患です。

その原因は明確に解明されておらず、診断や治療が難しいことから、多くの患者が日々の生活に大きな影響を受けています。

現代医学では、痛みの感覚が脳内で過剰に増幅されることが一因と考えられていますが、その具体的な治療法はまだ確立されていません。

そこで、東洋医学の一つである鍼灸が、線維筋痛症の新たな治療法として注目されています。

本記事では、東洋医学的な鍼灸の視点から線維筋痛症の症状や治療法について徹底的に解説し、どのようにして鍼灸がこの病気に対して効果を発揮するのかをご紹介します。

線維筋痛症で悩む方々にとって、鍼灸は症状緩和の一助となり得る可能性があります。

痛みに苦しむ日々を少しでも楽にするために、鍼灸がどのように役立つのかを詳しく詳しく解説します。

線維筋痛症とは

線維筋痛症(Fibromyalgia)は、3ヶ月以上の長期にわたって、身体の広範な部位に疼痛をきたす原因不明の慢性疾患です。

慢性的な痛みにより、日常生活における動作や生活の質が大きく損なわれますが、器質的な組織破壊などをきたすことはなく、生命が脅かされることもありません。

原因はまだ完全には解明されておらず、さまざまな検査を行っても、患者さんに共通した特徴的な異常がみられないことから、わが国では線維筋痛症の診断が遅れることがしばしばです。

現在のところ線維筋痛症を完治させる治療法がなかなかないため、日常生活への影響が大きく、社会生活が著しく困難になることが大きな問題となっています。

有病率は1.7%

欧米では一般人口の2%前後に線維筋痛症患者さんがみられるとされています。

わが国では、2003年の厚生労働省研究班の調査(住民調査)で日本の人口の約1.7%(有病率)の方々が線維筋痛症であるとされています。

関節リウマチがわが国で約0.7%(最大でも1.0%)の有病率であるのに比べて、線維筋痛症はさらに多く、約200万人の線維筋痛症の患者さんがいることになります。

男女比は1:4.8と女性に多く、推定発症年齢は約44歳、患者平均年齢は約52歳です。

線維筋痛症は小児や高齢者にも発症しますが、成人の女性に多い病気といえます。

当院で鍼灸治療を受けている線維筋痛症の患者さんも皆さま女性です。

一番若い方では、11歳の線維筋痛症の患者さんがいらっしゃいます。

線維筋痛症の原因

線維筋痛症がどうして起こるかは、正確なことは現状では解っていません。

しかし、線維筋痛症の痛みは、痛みのある部位に原因があるのではなく、痛みを、痛みとして感じる脳のネットワーク(回路)が過敏(中枢性感作)になっているとされています。

すなわち、痛み刺激がないのに、脳の痛みの回路が自然発火し、興奮しているために身体のあちこちが痛みと感じたり、身体を触られたり、軽く圧迫されただけで強い痛み(アロディニア;異痛症)を感じるわけです。

線維筋痛症の症状

線維筋痛症の症状は、主症状である慢性疼痛と、神経系・精神系症状が出現します。

◆慢性疼痛

疼痛部位は全身の広範囲に及びます。

筋肉や関節、軟部組織などの自発痛が中心ですが、痛みの部位と程度は日によって変化するだけでなく、日内変動も認められます。

十番堂で鍼灸を受けている線維筋痛症の患者さんは、

「アイスピックの様な鋭い物で刺されているような痛みが、全身あちこち移動する」

と仰っています。

◆神経系・精神系症状

・疲労感、全身倦怠感

・頭重感、頭痛、偏頭痛

・痺れ

・睡眠障害

・不安感、抑うつ感

・乾燥症状(ドライアイ、ドライマウスなど)

・動悸

・めまい、耳鳴り

・ほてり、微熱

・手や脚のむずむず症状

など

線維筋痛症の診察・診断方法

線維筋痛症の診断には、米国リウマチ学会(ACR)の「線維筋痛症分類基準」(1990年)や「線維筋痛症診断予備基準」(2010年)が用いられます。

線維筋痛症の主症状が全身性の慢性疼痛であることから、以下の項目を満たすかどうかを確認することが重要です。

①広範囲にわたる疼痛(疼痛の広がり)があること

②触診の際に圧痛点(押すと痛みを感じる場所)が基準の18カ所のうち11カ所以上認められること

③3カ月以上継続する慢性疼痛であること

線維筋痛症の東洋医学的な考え

◆痛みの種類

“痛み”と言っても、痛みには様々な種類や表現があります。

東洋医学では、痛みの種類によって病理がそれぞれ変わってきます。

種類特徴病理の可能性
脹痛張りがある気滞、肝の病理、風熱の感受、湿痰内停
刺痛針で刺されるような痛み瘀血、湿熱薀積、火熱、寒熱外感
酸痛だるい痛み湿邪、気血不足、瘀滞、精気の虚損
重痛重だるい痛み湿、脾の運化失調
冷痛凍りついたような冷たい痛み寒邪、陽気不足
灼痛灼熱感を伴う灼けつく痛み鬱熱内薀、痰熱内阻、湿熱薀積、陰虚火旺
隠痛ジワジワ、シクシクと連続した痛み(我慢できる痛み)陰血の不足や陽気の不足による経脈の失養
掣痛引っ張られるような感じを伴う痛み(筋肉が痙攣を起こしているような痛み)寒痰、瘀血阻絡(関節痛の場合は風湿)
空痛空虚感を伴う痛みで頭部に起こる腎精虚損、中気虚衰
紋痛胸または腹部に痙攣が起こり捻じれたような障害を受けること
または、痙攣と痛みが起こること
砂石阻滞、瘀血阻絡、蛔虫
遊走痛部位が移動する痛み気滞、風邪
竄痛繰り返し場所を変える痛み気滞、風邪
固定痛痛む部位が同じで固定されている痛み血瘀、湿痰などの有形の邪の集まり
悶痛不安や恐怖感を伴う痛み心神不寧
卒痛突然、発作的に痛み出し、激しく痛む外邪(寒邪)が多い
緩痛徐々に起こり、少しずつ重くなる痛み多くは久病、虚証、気血不足、温煦失調
時痛痛みはしばらく続かず、休息がある
痛みがある時と無い時がある
気滞、虚証
劇痛激しく耐えられないほどの痛み気血の停滞が著しい
陣発痛発作のたびに繰り返す痛み邪正抗争の時に気血が停滞する
持続痛同じ調子で痛み、よくなる時がない状態多くは瘀血
参考文献 一般社団法人北辰会、『北辰会方式実践編』、緑書房、2016年

◆痛みが起こる部位

痛みが起こる部位は、患者さんによってそれぞれ違います。

痛む部位を流れる経絡と、その経絡に関連する内臓(五臓六腑)が重要になってきます。

例えば、‟腎”に異常があると、“足少陰腎経”のライン上に痛みが出てきます。

このように「痛みの種類」を確認して、痛みが起こっている“病理”を把握し、

「痛みの部位」を特定して、どの“経絡・内臓”に異常があるか明確にしながら、鍼灸治療を行っていきます。

この他に、痛みに敏感になっている脳やココロの状態を落ち着ける治療も同時に行っていくと、痛みを感じにくくなってきます。

実際に線維筋痛症の患者さんを東洋医学的な観点で診察してみると、特定の経絡上が痛みやすく、その経絡に関連した内臓が失調していることが大半です。

十番堂の訪問鍼灸治療

1、線維筋痛症の治療経験が豊富

当院は、線維筋痛症や脳神経系の疾患、難病の治療経験が豊富です。

訪問診療の経験は、述べ1万件以上の実績があります。

2、東洋医学的な鍼灸治療

東洋医学の考え方で治療を行い、五臓六腑、十二経絡を調整することで、 線維筋痛症による痛み以外の全身症状に対してもアプローチできます。

3、健康保険、〇障が適用

医師の同意があれば、健康保険を用いて治療を受けることができます。

線維筋痛症による痛みによって働けなくなってしまい経済的に余裕がない方でも、健康保険や心身障害者医療助成制度(〇障)が使えるため、治療費の負担が少なく、長く治療を続けられます。

心身障害者医療助成制度(〇障)についてはこちらをご覧ください。

4、初回無料体験実施

初回は無料で治療を体験することが可能です。

問診に1時間程頂き、線維筋痛症の経過や、これまでの病気や体質などを考慮しながら治療していきます。

初回1度の治療で変化を感じることは難しいですが、雰囲気を感じて頂き一緒に治療を進めていけるかどうかご検討を頂ければと存じます。

医師の同意書や、お手続き方法についても初回時に詳しくご説明致します。

5、訪問診療

痛みがあると、治療やリハビリのために外に出るのは不安があり、一苦労です。

訪問鍼灸十番堂は、国家資格を持った治療家がご自宅へ往診するので、快適なご自宅で治療を受けることができます。

症例

当院では、線維筋痛症の患者さんを数多く治療しています。

線維筋痛症に悩んでいた40代女性の症例を一例ご紹介します。

【現病歴】

35歳で出産後、育児で不安やストレス、疲労が重なっていた時に、全身に痛みが出現するようになる。

皮膚よりは深部で、筋肉なのか、血管なのかわからないが、奥の方でチクチクした痛みが走る。

痛みは夜間に悪化し、痛みによって寝れないことが増えた。

病院に受診すると、線維筋痛症と診断され、痛み止めとしてリリカを処方される。

睡眠不足、育児の疲労による倦怠感が強くなり、外出も困難になる。

線維筋痛症を根本から治したいと思い、当院の訪問鍼灸を開始。

【東洋医学的な診察、問診、診立て】

脈診:弦脈(肝の異常、気血の停滞を示す)

腹診:肝相火、少腹急結(肝の異常、瘀血を示す)

経穴診:合谷、太衝、三陰交、肝兪、腎兪に反応あり(肝の異常、腎の異常、気血の停滞、気や精の不足を示す)

痛みの部位:全身広範囲だが、一番強く頻度が多いのは太腿の内側(肝や腎の経絡を示す)

増悪条件:ストレス時、夜間、睡眠不足

緩解条件:外出して楽しいことをしている時、入浴時

このような情報から、ストレスによる肝の異常と、出産や睡眠不足、疲労による腎の異常によって、気血が巡らず、全身の痛みを引き起こしていると考える。

【治療方針】

肝と腎に関するツボに鍼をして、流れが悪くなっている血流を巡らせる。

ストレスを緩和させてリラックスさせ、良質な睡眠を取れるようにして、疲労を回復させる。

【経過】

週3回のペースで往診治療をする。

約1ヶ月後、痛みはあるものの、痛みの程度が半減する。

睡眠も取れる日が増えてきて、体力的、精神的にも余裕が出てくる。

約半年後、痛み止めを服用しなくても、絶えれる程度の軽い痛みになる。

痛みはゼロではないが、気にならない時も多く、痛みで眠れないということはなくなった。

約1年後、ほぼ痛みが出ることはなくなる。

睡眠不足とストレスが溜まってくると、軽い痛みが出現することが稀にある。

完治ではないが、患者さん本人が線維筋痛症で悩んでいたことを忘れるくらい改善した。

その後も治療を継続中。

最後に

これまで何例も線維筋痛症の患者さんを治療してきましたが、正直、すぐに簡単に治るという病気ではありません。

難しい病気だからこそ、親身になってカウンセリングさせて頂き、丁寧にしっかりお身体を診させて頂きます。

ご相談は随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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