多系統萎縮症(Multiple System Atrophy, MSA)は、運動機能や自律神経に障害を生じる原因不明の難病です。

数万人に一人が発病する珍しい病気で、男性は女性と比べて約二倍の発病率があるといわれています。

発病の平均年齢は53歳、生命予後は10年程度の例が多いようですが、近年徐々に改善されています。

多系統萎縮症の予後は不良で、パーキンソン病と比べても悪化するスピードが早いケースが多いようです。

これまで、

パーキンソニズムを主症状とする線条体黒質変性症(SND)

小脳失調症を主症状とするオリーブ橋小脳変性症(OPCA)

自律神経症状を主症状とするシャイ・ドレーガー症候群(SDS)、

上記の3つの疾患があると考えられていましたが、近年の研究によって2003年 (平成15年)から多系統萎縮症という病名に統合されました。

この記事では、多系統萎縮症(MSA)とはどのような病気なのか、東洋医学、鍼灸の視点から治療の可能性について詳しく解説していきます。

多系統萎縮症の分類と症状

多系統萎縮症は「線条体黒質変性症」、「オリーブ橋小脳萎縮症」、「シャイ・ドレーガー症候群」の三種類に分類されます。

1、線条体黒質変性症(SND)

線条体黒質変性症は50歳以降に発症するケースが多く、男性の方が、女性よりもやや多いようです。

多系統萎縮症のうち、およそ30%を占めています。

【代表的な症状】

・手足のこわばり

・全身の筋肉がかたくこわばる

・指先の震え

・歩行障害

・表情が乏しい

・動作が遅くて緩慢になる

このようにパーキンソン病と似た症状がみられますが、病状が進むとパーキンソン病の薬が効かなくなります。

ADL(日常生活動作)障害の進行が早い場合は、この疾患が疑われます。

2、オリーブ橋小脳変性症(OPCA)

オリーブ橋小脳萎縮症は40歳以降に発症することが多く、男女の差はありません。

多系統萎縮症のうち、およそ70~80%を占めており、もっとも患者数が多いタイプです。

脳のMRI画像では、小脳や脳幹の委縮、延髄オリーブが小さいなどの特徴が認められます。

【代表的な症状】

・起立時・歩行時のふらつき

・呂律が回らない

・箸を使う、ボタンをかける・外す、字を書くなど、手先の細かい正確な動きの障害

上記のような小脳性運動失調が顕著に出現します。

3、シャイ・ドレーガー症候群(SDS)

シャイ・ドレーガー症候群は50歳以降で発症するケースが多く、多系統萎縮症のうち、およそ16%を占めているといわれています。

オリーブ橋小脳萎縮症と同様に病気が進行すると、小脳と脳幹部の萎縮が確認できます。

原因は不明ですが、遺伝しないことが分かっています。

発病後の余命は約4年から7年程度のケースが多いようです。

【代表的な症状】

・立ちくらみ

・失神

・起立性低血圧

・尿失禁などの排尿障害

・汗をかかないなどの発汗障害

・睡眠時無呼吸、いびき

・男性の場合はインポテンツなどの性機能障害

この他にも様々な自律神経障害を引き起こすとされています。

多系統萎縮症の西洋医学的な治療

多系統萎縮症は進行性の疾患で、現在のところ根本的に病気を治す治療はありません。

パーキンソン病と似たような症状が出るため、パーキンソン病で用いられる薬剤がある程度有効な場合があります。

定期的に病状を評価し、歩行訓練などのリハビリを継続することで、症状の悪化を遅らせることができます。

この疾患は、喉仏にある声帯を動かす筋肉が麻痺してくることが多く、麻痺が悪化してくると窒息してしますため、気管切開を行うこともあります。

また嚥下が困難になった場合は胃瘻を造設し栄養状態の改善をはかる場合もあります。

多系統萎縮症の東洋医学的な考え

多系統萎縮症は、多岐にわたる症状が出現します。

その中でも特徴的な症状としては、立ちくらみ、めまい、震え、身体が不安定で倒れそうなどの“揺れ症状”です。

東洋医学では、全身が揺れ動いて、甚だしければ倒れそうになるという症状を「身振揺(しんしんよう)」と言います。

身振揺は全身が揺れ動くことを指し、頭のみ揺れる、手が震えるなど部分的なものは含めません。

また、悪寒があって寒くて全身が震える「寒戦」という症状とも異なります。

身振揺は内風(体の内側で起こっている風)が原因です。

自分の意志ではなく、身体が勝手に動いて揺れてしまう状態は、身体の中で風が舞っていると考えます。

自然界の風が木や旗を揺らすように、

身体の内側の風が脳、筋肉、精神などを勝手に動かして揺らすため、起立時や歩行時のふらつき、めまいが出現するのです。

この内風が出現する体質は、いくつかのパターンに分類されます。

(ここからは東洋医学の用語を使って説明します。)

1、肝陽火風

肝陽火風は肝陽上亢が進行して起こります。

【症状】

・めまい(倒れそうになる)

・四肢のしびれ

・振戦、手足のふるえ

・頭痛

・頭重足軽(雲の上を歩いているような不安定感)

・舌体のふるえ、舌のこわばり、言語障害

2、熱極生風

各種の高熱証に随伴する証候であり、実熱証の極期に現れることが多いです。

【症状】

・発熱、口渇、唇の乾燥

・けいれん、頚項部の硬直、身体を反る、目が上転する

3、陰虚風動

陰虚の重証として現れます。陰虚風動は筋脈が滋養されないために肝風を誘発し、動風症状が出現します。

【症状】

・手足のひきつり、筋肉がピクピク動く

・午後の潮熱、寝汗、手足のほてり

・口、咽、目の乾燥

4、血虚生風

肝血が不足して筋を滋養することができなくなると、虚風現象が現れます。

【症状】

・手足のしびれや振戦

・関節の拘縮やけいれん

・こむら返り

・めまい、目のかすみ、目の乾き

※内風、肝風内動についての参考文献

東洋学術出版社 『中医弁証学』 柯雪帆 編著 兵頭 明 訳

これらの病態が単体で身振揺を引き起こしているパターンもあれば、いくつかの病理が絡み合って症状を引き起こしているパターンもあります。

内風を引き起こす病態は上記以外にもあるため、鑑別は非常に重要になってきます。

十番堂の訪問鍼灸治療

1、多系統萎縮症などの脳神経系疾患の治療経験が豊富

多系統萎縮症の罹患数自体がそこまで多くないため、症例数が豊富とは言えませんが、多系統萎縮症をはじめとした脊髄小脳変性症、パーキンソン病などの脳神経系疾患、難病の治療経験は数多くあります。

訪問診療の経験としては、述べ1万件以上の実績があります。

2、東洋医学的な鍼灸治療

東洋医学の考え方で治療を行い、五臓六腑、十二経絡を調整することで、 多系統萎縮症に伴う全身症状に対してもアプローチできます。

3、健康保険、〇障が適用

医師の同意があれば、健康保険を用いて治療を受けることができます。

多系統萎縮症によって働けなくなってしまい経済的に余裕がない方でも、健康保険や心身障害者医療助成制度(〇障)が使えるため、治療費の負担が少なく、長く治療を続けられます。

心身障害者医療助成制度(〇障)についてはこちらをご覧ください。

4、初回無料体験実施

初回は無料で治療を体験することが可能です。

問診に1時間程頂き、多系統萎縮症の経過や、これまでの病気や体質などを考慮しながら治療していきます。

初回1度の治療で変化を感じることは難しいですが、雰囲気を感じて頂き一緒に治療を進めていけるかどうかご検討を頂ければと存じます。

医師の同意書や、お手続き方法についても初回時に詳しくご説明致します。

5、訪問診療

ふらつきや眩暈があると、治療やリハビリのために外に出るのは不安があり一苦労です。

訪問鍼灸十番堂は、国家資格を持った治療家がご自宅へ往診するので、快適なご自宅で治療を受けることができます。

最後に

多系統萎縮症は予後不良で病状が進行していく病です。

西洋医学的には原因不明の病気だと言われていますが、東洋医学の視点からみると、原因を探ることができるかもしれません。

多系統萎縮症が発症する前後の生活や体質を丁寧に問診し、分析します。

患者さんやご家族の心に寄り添いながら、治療を進めて参りますので、お困り場合はお気軽にお問い合わせください。