正常圧水頭症(NPH)とは
正常圧水頭症(Normal Pressure Hydrocephalus:NPH)は、
脳脊髄液が脳室に過剰にたまり、脳を圧迫することで起きる疾患 です。
代表的な症状は以下の「三徴候」です。
- 歩行障害(すり足・小刻み歩行・方向転換の不安定)
- 認知機能低下(注意力の低下・判断力の低下)
- 尿失禁(尿意コントロールが難しい)
特に 歩行障害 は最も特徴的で、
「ガタガタ歩き」「滑るような歩き方」と表現され、転倒リスクが高まります。
シャント手術後も歩きにくさが残ることがある
NPHの一般的治療は シャント手術(VPシャント) ですが、
以下のような症状が術後も続くケースが少なくありません。
- 歩幅が狭い
- 方向転換が苦手
- すり足が残る
- ふらつきやすい
- 太もも・お尻の筋力低下
- 立ち上がり動作の不安定
これは、NPHによる脳への圧迫状態が改善しても
長期間の運動不足・筋緊張のアンバランス・神経伝達の変化 が残るためです。
訪問鍼灸がNPHに向いている理由
① 歩行障害の原因に直接アプローチできる
NPHの歩行障害では、以下の下肢・体幹の問題が多く見られます。
- 大腿四頭筋の過緊張
- ハムストリングスの筋力低下
- 大殿筋・中殿筋の弱さ
- 前脛骨筋の働き不足(すり足の原因)
- 体幹の不安定性
鍼は 深部筋の緊張を緩和し、弱化している筋の活動性を高める 作用があり、
これにより歩き方が改善しやすくなります。
② 自宅で「実際の歩く環境」を評価できる
訪問鍼灸では、
- 廊下の幅
- 段差の位置
- トイレまでの導線
- ベッドからの立ち上がり
- 方向転換する場所
これらを“その場で確認しながら治療・指導”できます。
外来では分からない 生活環境に合わせた動作改善 ができる点が強みです。
③ 深部筋の緊張緩和に鍼が有効
NPHでは、外見では分かりにくい 深部の筋緊張 が歩行障害につながります。
鍼は、
- 過緊張筋の抑制(筋紡錘への作用)
- 関節可動域の改善
- 立ち上がり動作の負担軽減
- 歩行スピード改善
に有効で、特に 殿筋群・腸腰筋・ハムストリングス へのアプローチが効果的です。
④ シャント後の“リハビリ不足”を補える
シャント手術後は外来通院が難しい方も多く、
適切なリハビリが不十分なケースが見られます。
訪問鍼灸は、
自宅で安全に治療+機能訓練を提供できる ため、
回復のスピードを底上げしやすいメリットがあります。
実際の治療アプローチ
● 過緊張の強い筋へのアプローチ
- 大腿四頭筋
- 腸脛靭帯
- 前脛骨筋
- 腰部起立筋
● 弱化しやすい筋の活性化
- 大殿筋
- 中殿筋
- ハムストリングス
- 腸腰筋
● 歩行改善のための追加指導
- 正しい立ち上がり動作
- 方向転換時の重心移動
- ドア前・トイレ前の安全動作
- すり足改善のための足首可動域訓練
生活動作と合わせて指導することで 転倒リスクの低下 に繋がります。
当院で見られる改善例
- 歩幅が広がる
- 方向転換でふらつかなくなる
- 立ち上がり動作が軽くなる
- 足の運びがスムーズになる
- 疲れにくくなり、活動量が増える
特に 「すり足が改善して歩行距離が伸びる」 ケースが多い印象です。
まとめ
正常圧水頭症(NPH)では歩行障害が強く、
手術後も“歩きにくさ”が残ることが少なくありません。
訪問鍼灸は、
- 深部筋の調整
- 自宅動線に合わせた動作改善
- リハビリ不足の補完
- 転倒リスクの低減
という点で非常に相性が良く、
歩行の安定・動作の改善が期待できるアプローチ です。
正常圧水頭症による歩行の不安定さや、シャント手術後の「まだ歩きにくい」という状態は、適切なアプローチを行うことで改善の可能性があります。
当院では、
・ご自宅の環境に合わせた動作評価
・深部筋への鍼施術
・安全に歩くための機能訓練
を組み合わせ、日常生活の中で歩きやすさを取り戻すことを目的とした訪問型の施術を行っています。
「外来に通うのが難しい」
「歩くと不安定で困っている」
「家族の介助が負担になっている」
このようなお悩みがございましたら、一度ご相談ください。
初回は状況評価を中心に、ご自宅で無理のない方法をご提案いたします。
