患者
60代 女性
主訴
くも膜下出血後遺症、右片麻痺
既往歴
うつ病、痔瘻、下垂体腫瘍
現病歴
仕事で海外赴任中に頭痛が発症し、検査したところ下垂体腫瘍が見つかる。
帰国後、下垂体腫瘍を手術で摘出。
その後、くも膜下出血となり、右片麻痺、言語障害が発症した。
初診時の片麻痺の状態
右上肢は関節拘縮が強く、肘が屈曲し、手指も握ったままで、自力で動かすことができない。
常に痺れがあり、無理に動かすと痺れや痛みが強く出る。
右下肢も、股関節、膝関節、足関節を自分の意志で動かすことが難しい状態。
下肢も痺れがあり、冷えが強くて、浮腫んでいる。
足底やふくらはぎのこむら返りがよく起きるようになった。
初診時の言語障害の状態
呂律が回らなくなり、発語が上手くできない。
何かを伝えたくても、上手く伝えられなくて時間がかかりストレスに感じる。
初めて会う人や、タクシー運転手に道を伝える時などは緊張してしまい、特に呂律が回らなくなってしまう。
日常生活動作
自宅の中は車椅子で移動、または、麻痺側の下肢に装具を着けて手すりに掴まりながらなんとか移動している。
利き手の右が麻痺しているため、左手で字を書いたり、スプーンやフォークを持つ練習をしているが上手く使えない。
上着の着替えや、トイレでズボンを降ろして履くのも一苦労。
その他の症状
・肩こり
麻痺側の右肩に常に力が入っており、肩こりが強い。
・不眠
睡眠薬を飲まないと入眠できない。
・便秘
一日3回下剤を飲まないと便が出ない。
・夜間頻尿
夜中にトイレで3回くらい起きる。
装具を付けないと歩けないため、トイレに行くまでに時間がかかってしまい、粗相してしまうことがあることに困っている。
治療方針
1、指圧
→筋肉の緊張を緩和させ、血流、水の流れを改善する。
2、運動療法
→拘縮が強い関節をゆっくり伸ばして動かして、筋肉を緩めていく。
3、麻痺側の皮膚感覚のチェック
→感覚が鈍くなっている部位を擦る、押す、揉む、タオルを当てる、冷たい物や温かい物を当てるなどして、皮膚に様々な刺激を与える。
皮膚に刺激を加えて、患者さん自身に「どこの部位に、どんな刺激を当てられているか」を考えてもらうことで、感覚神経を経由した脳のリハビリとなる。
4、鍼灸治療
→五臓六腑のバランスを整え、十二経絡を巡らし、内臓、四肢の血流を改善する。
経過
週に4~5回のペースで治療。
(心身障害者医療助成制度を使用しているため自己負担は0円で、仕事をしていなくても経済負担は無いため続けられています。)
・治療直後
片麻痺による拘縮が緩和し、自分で動かせる可動域が広がる。
しかし、翌日になるとまた筋肉の緊張が強くなってしまう状態が続いていた。
・治療経過3ヶ月程
内臓の調子に変化が出てきた。
夜間頻尿が0~1回になり、途中で目が覚める回数が減った。
睡眠薬の量を減らしても寝れるようになってきた。
・治療経過1年程
片麻痺に変化が出てきたのを実感できるようになった。
手を上に挙げる動き(肩関節の挙上)ができるようになってきた。
この動きが少しできるだけで、服を着替えやすくなる。
膝を曲げる動き(膝関節の屈曲)も可動域が広がってきた。
以前は自力で曲げるのが困難だったため、靴下やズボンを履くのが大変だったが、1年前に比べるとスムーズになっている。
拘縮の程度に変化はあるものの、右手を使って生活することはできず、車椅子がないと移動できない状態は続いている。
・治療経過3年程
更に関節拘縮や内臓の状態に変化が出ている。
毎年冬は寒さで筋肉の緊張が悪化していたが、冷えても悪化しにくくなっている。
言語障害は残るものの、呂律は回りやすくなり、会話にも自信がついて笑顔が増えた。
患者さんの声
拘縮が強かった右腕が柔かくなり、自分で洗濯物を干せるようになりました。
睡眠の状態や便秘も改善して、薬も減らせました。
変化するまで時間はかかりましたが、確実に治療の効果を実感しています。